11月30日(木)放送の「主治医が見つかる診療所」では肺炎を引き起こす細菌である肺炎球菌について触れられました。この細菌を撃退する秘密が脾臓にあるということです。
肺炎とは
肺炎は日本人の死因第3位です。高齢の方ですと、誤嚥性肺炎や肺炎球菌感染症の1つとしての肺炎が問題になりやすく、重傷化すると命に関わります。
特に自覚症状が乏しく、食欲がない、元気がない場合に肺炎だったということもよくあるので、高齢者の方は、ただの風邪と自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
肺炎を引き起こす肺炎球菌
通常、細菌が体に侵入すると白血球がそれを発見し退治します。これが人の体の免疫システム。しかし、肺炎球菌のは自身の周りを莢膜(きょうまく)というかたい殻で覆っており、人間の免疫が攻撃しにくい構造をしています。
そのため肺炎球菌はあたかも隠れ蓑を被っているように白血球に見つからず、その監視から身をかわします。
脾臓のマージナルゾーンB細胞の働き
脾臓は、昔はあまり重要な臓器と考えられていませんでしが、現在は重要な免疫システムを担っていると考えられるようになりました。
この脾臓に「マージナルゾーンB細胞」という特別な免疫細胞があり、これなら肺炎球菌を攻撃することが可能なのです。
マージナルゾーンB細胞が肺炎球菌に触れると抗体を出し肺炎球菌に抗体がくっつきます。すると免疫細胞の好中球が敵とみなして食べて退治してくれます。
肺炎球菌ワクチン
この脾臓に働きかけて肺炎感染のリスクを減らすのが肺炎球菌ワクチン。
脾臓は加齢とともに小さくなっていき、同時にマージナルゾーンB細胞の数も減少していきます。肺炎球菌ワクチンは小さくなってしまった脾臓に働きかけて抗体を多く出し、肺炎球菌を退治するのを助けてくれるのです。
子供の肺炎球菌ワクチンは2013年から定期接種となっているので、今の子供が高齢になる頃は今より肺炎罹患者が激減していることが期待できます。
成人用には、2014年から65歳以上の高齢者で定期接種制度が始まりました。成人用肺炎球菌ワクチンをはじめて接種する方のみ該当年度に公費助成が受けられます。